(独)産業技術総合研究所(産総研)は5月16日、九州工業大学、津山工業高等専門学校と共同で水素ガスを遮蔽する性能に優れた複合材料を開発したと発表した。 水素は、CO2やNOX(窒素酸化物)などの環境悪化物質を一切排出しない夢のクリーン燃料として期待されているが、材料を通り抜けてしまう透過性が強いためガスバリア性(気体を遮蔽する性能)の高い水素貯蔵タンク用新材料の開発が求められている。 開発した新材料は、産総研が既に開発済みの「クレースト」と呼ぶ粘土製の薄膜と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を積層し、高温・高圧をかけて加工した水素タンク用の複合材料。製法は、プリプレグという炭素繊維にプラスチックを含浸させたCFRPのシートとクレーストを何層にも積層し、150ºC前後に加熱して数気圧の圧力で成型するという簡単なもので、接着剤などは使わない。 CFRPプリプレグ3枚にクレースト1枚の割合で積層した厚さ1mmの試験体での測定では、従来報告されている材料の100倍以上の水素ガスバリア性が記録され、長さ5m、直径1m、圧力50気圧の水素タンクに使った場合で年間の水素リーク量を0.01%に抑えられることが分かったという。 耐久性にも優れ、10,000回繰り返して歪を与えたり、マイナス196ºCの極低温に100回曝しても水素ガスバリア性がほとんど変わらないことを確認している。 産総研では、水素自動車用燃料タンクや燃料電池容器、可搬式の液体水素貯蔵設備など軽量化が求められる分野に幅広く利用できるとし、今後さらに広範な性能評価試験を行うと共に各種用途への適合性を検討することにしている。 詳しくはこちら |  |
CFRPと粘土薄膜「クレースト」を積層して作った新複合材料(提供:産業技術総合研究所) |
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