高効率超短パルスレーザーを開発、次世代レーザー加工システムを実現
:理化学研究所/産業技術総合研究所

 (独)理化学研究所と(独)産業技術総合研究所は2月4日、新レーザー結晶を用いてフェムト(1000兆分の1)秒の超短パルス光を高い効率で発生するレーザーを開発、同レーザーを利用した次世代レーザー加工システムを実現したと発表した。
 新レーザーの効率は、従来の加工用レーザーより1桁以上高く、平均出力は10Wを超える。このレーザー加工システムの実現で、透明ガラス、セラミックス、金属などの高精度微細加工が可能になった。
 これまでのフェムト秒レーザーは、超短パルスの発生にチタンサファイアと呼ぶレーザー結晶(外部からの光を吸収してレーザー光を発する物資)を使っていた。しかし、レーザーシステムの駆動には別にもう1つ、ベース用のレーザーが必要で、結果として、電気から光への変換効率は0.5%が限度だった。
 研究グループは今回、レーザーの光変換効率を飛躍的に向上させるため、イッテルビウム(Yb)を添加した新レーザー結晶を用いた。これで直接駆動が可能になり、ベースレーザーが省け、従来より1桁以上高い光変換効率を達成、平均出力10Wを実現した。
 また、今回のレーザー加工システムでは、新開発のレーザーミラー(レーザー光を増幅する鏡)を搭載した。このミラー開発には、産総研の半導体プロセス技術を利用、ミラー用基板の表面平坦度を原子レベルまで平滑化、その上に高品質なミラー膜を形成することで99.999%レベルの高い反射率を得た。この高精度ミラーを組み込んだレーザー加工システムは、2008年度からレーザー加工の試験運用を開始する。
 また、理研や埼玉県産業技術総合センターを窓口に一般からの委託加工を実施、加工性能の実証試験も行う。
 この開発は、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業プロジェクトに採択された2006年度から3年計画の「埼玉オプトプロジェクト」として、理研、産総研を中心に国内14機関(9企業、2大学、3研究機関)の技術を結集、新レーザー結晶技術・高精度ミラー技術・成膜技術・評価技術の革新と融合を進める中で得た成果である。

詳しくはこちら

新開発の高効率超短パルスレーザーを用いた次世代レーザー加工システム(提供:理化学研究所、産業技術総合研究所)