(独)理化学研究所は2月6日、マウスのES細胞(初期胚から得られる幹細胞)から赤血球の前段階である赤血球前駆細胞株を作ることに世界で初めて成功したと発表した。
　赤血球は、酸素を運ぶ血液成分で、骨髄などにある血液幹細胞（幹細胞：自分自身が増える複製能力と他の細胞を作り出す分化能力を持つ細胞）が、赤血球前駆細胞に分化し、前駆細胞から核が抜け出す｢脱核｣を経て産み出される。赤血球を大量に作るには、赤血球前駆細胞の大量増殖が必要だが、正常な血液細胞から赤血球前駆細胞株（細胞株：元の性質を保ったまま、半永久的に培養できる細胞）を作ることは難しく、まだ実現していない。
　研究グループは、すでに開発していたサルのES細胞から全血液系細胞を分化誘導する技術を用いて、マウスES細胞から血液系細胞を分化誘導し、細胞株の作製を試みた。
　研究では、8種類のマウスES細胞株を使用して合計63回の分化誘導実験を行い、5種類の血液前駆細胞株を作製した。このうち3種類は、赤血球系の細胞株（赤血球前駆細胞株）で、試験管の中での分化能力を持ち、脱核赤血球を産み出す能力も持っていた。他の2種類は、肥満細胞系の細胞株だった。作製した赤血球前駆細胞株をマウスの生体内に移植したところ、生体内でも分化し、脱核赤血球を産み出す機能が発揮されることを実証した。
　研究グループは今後、ヒト赤血球前駆細胞株から、赤血球を作り出す技術の開発を目指すことにしている。
　この研究成果は、米国のオンライン科学雑誌「PLoS ONE」(2月6日付)に掲載された。

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