衛星観測技術を活用し地中の生態画像の解析に成功
:国立環境研究所

 (独)国立環境研究所は1月7日、衛星観測などで利用されている分光反射画像の解析技術を地中の植物生態研究に応用し、近赤外波長域の反射画像をもとに、植物の根の生死の判断や地中の有機物と土壌の分類精度を格段に向上させることに成功したと発表した。
 地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の吸収・放出源としての森林の機能を評価する際、根や土壌有機物の量やその動態の解明が重要である。従来、地中に埋設した透明なケースを通して周囲を撮影し、定期的な変化を観察する手法などがとられていた。
 今回の研究では、従来の画像解析の弱点を解決するため、画像解析を行う際の撮影手法に新しく分光技術を導入した。分光反射画像は、対象物に光エネルギー(入射光)が当たり跳ね返ってきた反射光を波長ごとに分けて計測し、その強度を画像として記録したもの。
 実験では、黒ボク土、枝葉を混合したガラスケースでポプラを育成し、ガラス側面からCCD(電荷結合素子)カメラと分光器を組み合わせた分光カメラで根の状態の連続分光画像を定期的に撮影した。その結果、通常のカラー画像(波長は、赤650nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、緑550nm、青450nm)と比べて、近赤外(波長886nm)と可視光の赤(650nm)と緑(550nm)を組み合わせて撮影した画像では、枯死した根までもはっきりと写っていた。
 この実験により、分類精度(分類正解率)は、カラー画像の約67%に対して、近赤外と可視光を組み合わせた画像では約93%となり、近赤外画像の利用によって自動分類の精度が飛躍的に向上することが明らかになった。 

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