科学衛星「ひので」が太陽の「太陽風」吹き出し口と、「コロナ」加熱の謎を解く鍵を発見
:宇宙航空研究開発機構/国立天文台

 (独)宇宙航空研究開発機構と国立天文台は12月7日、昨年9月に打ち上げた第22号科学衛星「ひので(SOLAR-B)」が地球にも影響を及ぼす「太陽風(たいようふう)」(高温のガス)の太陽での吹き出し口を初めて捉え、さらに太陽上空の「コロナ」(太陽を取り巻く大気)加熱に重要な役割を果たしていると見られる磁力線に沿って伝わる「アルペン波」と呼ばれる横波を発見したと発表した。
 太陽風吹き出し口の様子は「ひので」のX線望遠鏡が画像でキャッチ。これで、太陽表面の1万分の1弱の領域から、太陽風が磁力線に沿って秒速140km前後で上空に常に吹き出ていることが分った。この領域から伸びる磁力線は、太陽表面に戻って来ていないことが磁場観測から推察されるため、ここから吹き出した高温ガスが磁気嵐を起して地球に影響を与える太陽風の源になっていると思われる。
 また、可視光・磁場望遠鏡は、太陽の上空の「プロミネンス」(高温コロナに浮かぶ低温ガスの塊)を観測した。動画解析の結果、プロミネンスのガスが上下に波打っていることが分かった。これは、予言されていた磁力線に沿って伝わるアルペン波の検出と考えられている。   
 表面温度6000ºCの太陽が、上空の100万ºC以上に達するコロナを加熱維持できるのは、磁力線を伝わるエネルギーによって、電子レンジのように加熱しているからだとの説もあり、アルペン波発見は太陽上空のコロナ加熱の謎を解く鍵になると期待されている。
 この成果は、同日発行の米国の科学誌「サイエンス」が、他の7編の関係論文と共に「ひので特集」として掲載した。日本の科学衛星の観測成果を同誌が特集したのは2006年6月2日号の小惑星探査機「はやぶさ特集」以来のこと。

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「ひので」のX線望遠鏡が捉えた太陽の活動領域上空のコロナ(提供:宇宙航空研究開発機構/国立天文台)