原子核の中にある「核力」の起源を世界で初めて解明
:筑波大学/東京大学

 筑波大学と東京大学は6月20日、原子核の中にある「核力」と呼ばれる“強い力”の起源を量子色力学(クオークとそれを結びつける糊粒子(グルーオン)を支配する基礎理論)から解明することに世界で初めて成功したと発表した。
 この研究により、湯川秀樹博士(故人、1949年ノーベル物理学賞受賞)が72年前に提唱した「中間子理論」が、クオークを基礎に初めて検証された。
 湯川博士は1935年に、陽子や中性子を原子核に束縛する核力を理論的に説明するために中間子論を提唱した。その後の素粒子物理学の発展により、陽子・中性子・中間子などは、クオークと呼ばれる素粒子からできていることが分かった。しかし、クオークの基礎理論である量子色力学の複雑さのために、核力の起源をクオークから解明することは素粒子・原子核理論における未解決の超難問の一つとされていた。
 研究チームは、近年量子色力学の複雑な計算を可能にする方法として知られる格子ゲージ理論を、核力の問題に適用し、高エネルギー加速器研究機構の高速スーパーコンピューター「ブルージーン」を用いて、計算時間が約3000時間(約4ヶ月)にわたる大規模なシミュレーションを行った。
 その結果、陽子や中性子が遠距離では引き合い、近距離では強く斥けあうという、核力の性質を、基本粒子としてのクオークから初めて明らかにし、湯川博士が提唱した中間子論の正しさを裏付けた。
 研究成果は、米国物理学会の「フィジカル・レビュー・レター」誌6月号と、そのオンライン版に掲載される。

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