スズメバチの女王バチを不妊化する寄生線虫を発見
:森林総合研究所

 (独)森林総合研究所は4月5日、スズメバチの女王バチを不妊化する寄生線虫を世界で初めて発見したと発表した。
 森林やその周辺に生息していることが多いスズメバチは、激しい攻撃性と強い毒を持っており、我が国では毎年30人から40人が刺されて死亡している。スズメバチ対策としては、これまで巣の駆除(破壊)などの方法がとられてきたが、天敵を利用することも一つの方法と考えられてきた。
 同研究所では、スズメバチの野外での発生状況やその寄生生物を探索するため、一昨年札幌市内の林道に、ハチの好む匂いを出す「わな」を仕掛けて捕獲調査を行った。
 この調査で、5月から8月の間に越冬明けのスズメバチ類の女王バチを多数採集した。このうち普通種であるキイロスズメバチの女王バチ77匹を調べたところ、その70%が寄生線虫の一種に感染して、卵巣が全く発達せず不妊化していることが分かった。
 スズメバチの巣は、越冬から目覚めた女王バチが春に作り始めるが、卵巣の発達しない女王バチは巣を作ることができない。この寄生線虫の仲間は、これまでマルハナバチ類での寄生しか知られておらず、スズメバチの仲間での確実な記録はこれが世界で初めてとなる。さらにこの寄生線虫を分類したところ、新種であることが分かった。
 同研究所では、この寄生線虫の培養ができれば、キイロスズメバチの越冬場所に放して女王バチに感染させ、春先に作る巣の数を減らすことが可能になるとみている。

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越冬後に巣作りを始めたキイロスズメバチの女王バチ(提供:森林総合研究所)