(独)森林総合研究所は3月26日、マツ枯れ被害の最北端に当たる東北地方北部では、日本海側と太平洋側で別々に被害が拡大していることが明らかになったと発表した。
マツ枯れの被害は、奥羽山脈をはさんで日本海側と太平洋側で同調的に北上を続け、現在日本海側では秋田県北部、太平洋側では岩手県中部が被害の最北端地域となっている。被害先端地域では、これ以上マツ枯れの被害が拡大するのを防ぐため防除帯を設け、マツ材線虫病を媒介するマツノマダラカミキリの侵入を監視しているが、それがどのように移動しているのかについてはこれまで情報が乏しく信頼できる科学的なデータが得られていなかった。
マツノマダラカミキリは、マツ材線虫病を拡げるマツノザイセンチュウを運ぶカミキリムシで、北海道を除く日本各地に分布している。森林総合研究所では、秋田県と岩手県の被害地でマツノマダラカミキリを採集し、分子生物学の手法を用いてDNA(デオキシリボ核酸)を取り出し遺伝子の解析を行って比較した。
その結果、両県のマツノマダラカミキリは遺伝的に異なり、奥羽山脈を越えて両県の間を移動していないことが判明した。その一方で秋田県内、岩手県内ではほぼ均一な遺伝子の組成を持っていた。これによってマツ材線虫病は、東北地方の日本海側と太平洋側で別々に北上し、被害を拡散してきたことが明らかになった。
この研究により、今後東北の被害先端地域では、比較的平坦な地形に位置するマツ林など集中的に防除する地点を特定し、効率のよい防除対策をとることが可能となった。
No.2007-13
2007年3月26日~2007年4月1日