筑波大学と北海道大学の研究グループは3月10日、ナノサイズの金微粒子の表面に引き起こされる2つの異なるタイプの電子集団運動の継続時間を計ることに成功したと発表した。この研究成果は、太陽電池や人工光合成などの光エネルギー変換システムにおいて、光エネルギーをより有効に活用するのに役立つという。
■光エネルギー変換システムの性能向上などに貢献
金の粒をナノレベルの微粒子にすると、金は入射した光と相互作用し、金表面近くの電子に集団運動が引き起こされ、それによって光の吸収あるいは放射が生じる。この現象は表面プラズモン共鳴と呼ばれる。
表面プラズモン共鳴に基づく電子の集団運動では双極子と四重極子という2つのタイプが見られ、双極子では光は放射されるが、四重極子だと外部への放射は抑制され、高い光閉じ込め効果が期待できる。従って四重極子を選択的に誘起すれば光エネルギーの有効活用が望めることになるが、2つのタイプの継続時間は数フェムト秒(フェムトは1,000兆分の1)というごくわずかな差しかなく、これまでその観測・計測はできなかった。
研究グループは今回、数フェムト秒の極短パルス光を出すレーザーと、金属から飛び出す電子を高い空間分解能で可視化できる顕微鏡とを組み合わせることにより、金ナノ微粒子表面で引き起こされる電子の集団運動の継続時間を世界で初めて観測することに成功した。
観測の結果、電子の集団運動によって引き起こされる電子波が双極子の場合は5フェムト秒、四重極子の場合は9フェムト秒だった。
この計測は、より効果的に光閉じ込めを可能にする金属ナノ構造の設計指針を確立するうえで重要な成果であり、優れた光閉じ込め機能を持つ革新的な太陽電池や人工光合成などの光エネルギー変換システムへの応用・展開が期待されるという。