
「こうのとり」5号機を載せて打ち上げられるH-ⅡBロケット5号機(提供:JAXA)
(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(株)は8月19日午後8時50分、地球周回飛行中の国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ無人補給機「こうのとり」5号機をJAXAの種子島宇宙センター(鹿児島・南種子町)からH-ⅡBロケット5号機で打ち上げ、約15分後にほぼ所定の軌道に乗せるのに成功したと発表した。「こうのとり5号」は8月25日未明にドッキングする予定。
■「暗黒物質」観測装置や小動物飼育装置など搭載
ISSへの無人補給機には「こうのとり」のほか、米国の「シグナス」と「ドラゴン」、ロシアの「プログレス」が運用されているが、これら米ロ補給機の資材運搬能力がいずれも2~3tなのに対して「こうのとり」は約6tもある大型。2014年秋以降、ロケットの爆発などで、「シグナス」も「ドラゴン」も「プログレス」も1回ずつ補給に失敗しているが、「こうのとり」は2009年の初号機から5回続けて打ちち上げに成功した。
「こうのとり」は直径約4.4m、長さ約10mの円筒型で、最大6tまでの資材を運べる。最先端が補給物資などを入れる補給モジュールになっており、5号機ではこの補給モジュールの容量を「こうのとり」で使っている物資輸送用バック換算で、初号機の208個から242個までに拡大。さらに、打ち上げ80時間前でも積み込める「速達便」の数も、工夫を重ねて、同じパック換算で92個にまで増やした。
今回、「こうのとり」5号機がISSに運ぶ補給品は全部で約5.5t。この中には加齢研究のために12匹のマウスを1 匹づつ約30日間飼育できる小動物飼育装置、金属から絶縁体まで幅広く高温融体の熱物性データを計測できる高温融体研究プラットフォーム、宇宙の「暗黒物質」の正体に迫る高エネルギー電子・ガンマ線観測装置、多様な実験が可能な多目的実験ラックの2台目などがある。米航空宇宙局(NASA)の要請で、今年6月に失敗した米国の「ドラゴン」で運ぶ予定だった水処理用ポンプやフィルター、飛行士の生活用品など210kgも搭載している。
JAXAによると、「こうのとり」5号機がISSとドッキングの際には、ISSに滞在中の油井亀美也宇宙飛行士がISSのロボットアームを操作して「こうのとり」5号機をISSに結合する作業を行い、ISS搭乗経験者の若田光一宇宙飛行士がNASAの担当者として油井さんの作業を支援する。