
衝突実験に使用した一段式火薬銃(提供:物質・材料研究機構)
(国)物質・材料研究機構と東北大学、広島大学の研究グループは8月18日、生命誕生の大きな謎であったDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)構成分子の生成が、隕石の衝突で起きることを模擬実験で確認したと発表した。この実験ではタンパク質の構成物質である各種アミノ酸も同時に生成しており、生命の起源に迫る重要な手掛かりが得られたとしている。
■2種類の核酸塩基と9種類のアミノ酸が同時に生成
研究グループは、物質・材料研究機構の中沢弘基名誉フェロー(元東北大学教授)の「鉄を含む隕石の衝突により、生命体の材料となる有機物が無機物から生成する」という仮説をもとに、今回、生命誕生前の地球の海洋に鉄を含む隕石が秒速約1kmの超高速で衝突することを模擬した実験を実施、生成物を分析した。
その結果、隕石衝突により鉄、水、重炭酸、アンモニアなどの無機物から、最大2種類の核酸塩基と最大9種類のアミノ酸が同時に生成することを見出した。当時の地球で利用可能な無機物から、DNAやRNAの構成分子である核酸塩基が生成する反応を解き明かしたのはこれが初めて。
この成果は、地球上で最初の遺伝物質がどのようにして誕生したのかという問題の解決に重要な手掛かりとなりそうだという。