
新型基幹ロケットの検討図。飛翔中のイメージ(提供:JAXA)
(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月2日、三菱重工業(株)を中核に2020年度初打ち上げを目指して開発中のわが国の衛星打ち上げ用の新型基幹ロケットの開発状況について文部科学省宇宙開発利用部会に報告するとともに、名称を「H3(エイチ・スリー)ロケット」とすると発表した。現用のH-ⅡA・H-ⅡBロケットと同じ大型液体酸素・液体水素ロケットなのでヘッド記号は「H」を継承、開発・設計など機体構成を根本から見直したことから、シリーズ名称は「Ⅱ」から「3」に改めたとしている。
■自動点検機能の採用など整備期間・コスト半減目指す
新型基幹ロケット「H3」は、世界の衛星打ち上げ市場での国際競争力を高めるため、衛星打ち上げ費用を現在使っているH-ⅡAロケットの場合の半額=1基50億円程度に抑える狙いで2014年度から三菱重工(株)を主契約者に開発に着手、現在、詳細設計が進んでいる。国産の衛星打ち上げロケットの開発・設計を民間会社が主体となったのは今回が初めてである。計画では2017年度に詳細設計審査終了、2018年度から実機の製作開始、2020年度に試験1号機打ち上げ、となっている。
「H3」は全長約63mで、国産ロケットでは最も大きい。機体の直径は約5.2mの2段式ロケット。衛星の重さなどに応じて4本までの固体ロケットのブースタが付き、重さ6.5tの衛星を高度3万6000kmの静止軌道に乗せることができる。衛星打ち上げコスト低減のため、複雑な液燃ロケットの自動点検機能を積極的に取り込み、射場での整備作業期間をH-ⅡAの最短時間(53日)の半分程度にするのが目標という。
こうした点検の自動化などで、衛星打ち上げ当日の要員数が現在の100~150人(H-ⅡAの場合)の3分の1から4分の1になる。また、ロケット発射管制棟は吉信射点地区から竹崎地区に移し、射点の整備組立棟と射座も改修する。横置きのまま部品を組み付け、起立させて組み立てるなど、整備・点検作業を大幅に削減し、運用の簡素化に努める。なお、「H3」ロケットに愛称を付けるかどうかはJAXAと三菱重工(株)で検討を進めている。付くことになれば、日本初となる。