(国)物質・材料研究機構は6月29日、アナターゼ型の結晶構造をした酸化チタンの表面を原子レベルで観測し可視化、原子の種類を特性することに成功したと発表した。原子間力顕微鏡(AFM)と走査型トンネル顕微鏡(STM)の2つの観察技術を同時に使ったのが決め手となった。材料表面の原子や結晶欠陥の種類まで特定できたことで、光触媒や太陽電池などの材料として注目度が高いアナターゼ型チタンの効率向上に役立つとしている。チェコ・カレル大学とスペイン・マドリード自治大学との共同研究による。
■太陽電池の変換効率向上のカギに
酸化チタンは工業的には主に白色顔料に使われる。その結晶構造には安定な「ルチル型」と準安定な「アナターゼ型」など3タイプがある。アナターゼ型はナノ粒子レベルになると表面面積が相対的に増え、活性が高まる。太陽光の電力への変換効率や、触媒の効率も高められると期待が集まっている。ところが単結晶の作成が難しく、また原子レベルでの詳細な観測のできるSTMやAFM顕微鏡をもつ研究施設が限られていた。
STMは鋭く尖らせた金属針と原子の間に流れる「電流」を調整し、金属針と表面との距離を保ちながら走査することで原子の並びを画像化する。ところが電流の流れにくいアナターゼ型の観察は難しかった。
研究チームはAFMの原理を使い、金属針と原子との間に働く「力」が一定になるように針を動かし、距離を制御することで、表面の電気の流れにくさとは関係なく観察ができた。同時に信頼できるSTM画像も取得した。
この結果、AFM像ではチタン原子が明るく画像化でき、反対にSTM像では暗くなることから、周囲に広くコントラストの変化がつけられた。また、理論シミュレーションとSTM像を比較することで、表面に現れる欠陥の種類の特定にも成功した。