攻撃行動の強度を決める脳の制御メカニズム解明
―中脳にある背側縫線核のグルタミン酸入力が重要な役割
:筑波大学/国立遺伝学研究所ほか(2015年4月22日発表)

 筑波大学、国立遺伝学研究所、スイス・バーゼル大学などの共同研究グループは4月22日、雄マウスの攻撃行動の強度を決めている脳の制御メカニズムの一端を初めて解明したと発表した。

 

■濃度に応じて雄マウスの攻撃行動が増加

 

 動物の攻撃行動には「セロトニン」という神経伝達物質が重要な役割を果していることが多くの研究で分かっている。しかし、動物が攻撃行動を示している最中に、セロトニン系がどのような活性を示し、それがどのような伝達物質で制御されているかについては明らかでなかった。

 中脳にはセロトニン神経細胞が集まっている背側縫線核という部位があり、ここでセロトニンが作られ、脳の広い範囲に供給されている。この背側縫線核に、ある種の物質を投与すると、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸の放出が増加することが今回見つかった。

 そこで、研究グループはグルタミン酸を背側縫線核だけに投与してみたところ、グルタミン酸の濃度に応じて雄マウスの攻撃行動が増えることを見出した。攻撃行動を示している最中のグルタミン酸の放出量を測定すると、背側縫線核内でグルタミン酸の放出が増加しており、この増加は、マウスがさらに高い攻撃行動を示す状況下で一層高くなることも分かった。

 この結果を踏まえ、次に背側縫線核と、神経細胞で直接つながっている内側前頭前野という領域でのセロトニンを測定したところ、通常の攻撃行動ではセロトニンの放出に変化はないが、高い攻撃行動を示すような場面ではセロトニンの放出が増加することが明らかになった。

 これら一連の研究から、背側縫線核へのグルタミン酸の入力によって、マウスの攻撃行動のレベルが制御されており、背側縫線核のセロトニン神経細胞が高いレベルの攻撃行動においてのみ活性化される、といった制御メカニズムが明らかになったという。

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