
まぶし(いわゆるカイコ棚)に移された遺伝子組み換えカイコの5齢幼虫(提供:農業生物資源研究所)
(独)農業生物資源研究所は1月30日、平成26年に行った2回の遺伝子組み換えカイコ(緑色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコ)の飼育実験での交雑防止措置の結果を発表した。飼育は隔離飼育区画内の飼育室で交雑防止措置を施して行った結果、カイコの近縁の「クワコ」との交雑個体はなかった。
■捕獲成虫を遺伝子検査法などで検査
同研究所(茨城・つくば市)は、隔離飼育区画で平成26年7月14日からと、同9月12日からの2回にわたって遺伝子組み換えカイコの飼育を行い、「クワコ」との間で交雑が起こるかを調べるモニタリング調査を行った。
クワコは、自然界の桑の木の葉に自生する昆虫の一種。北海道からトカラ列島まで日本各地に分布し、カイコは5000〜6000年前に中国でクワコの品種改良によってつくられたといわれている。
生物研の飼育実験は、遺伝子組み換えカイコの研究が進み、中でも繊維利用を目的とする遺伝子組み換え繭糸(まゆいと)への期待が高まってきていることから実施したもの。
飼育は、2回とも飼育室の開閉可能な窓・シャッター・換気口に網を張る交雑防止措置を施し、隔離飼育区画の四隅に、モニタリング用トラップと性フェロモン(ボンビコール)を誘引源とするフェロモントラップを設置して寄ってくるクワコを捕獲し交雑を調べる方法を取った。
その結果、平成26年12月19日までにクワコのオスの成虫123匹を捕獲した。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法と呼ばれる遺伝子検査法などでその123匹すべてを調べたところ、緑色蛍光タンパク質遺伝子または赤色蛍光タンパク質遺伝子は検出されなかったことから、「遺伝子組み換えカイコとクワコの交雑は認められなかった」という。
また、収穫した繭(まゆ)は、熱乾燥により不活化して保管、飼育後に残ったクワの枝などは、隔離飼育区画内の残渣保管場所で30日後まで管理、その後、今年6月15日まで隔離飼育区画内の残渣管理用の穴に保管して不活化する。