イネの品種改良で不要な配列を除去し遺伝子改変
―植物では世界初、昆虫由来の「動く遺伝子」使い実現
:農業生物資源研究所(2014年12月25日発表)

 (独)農業生物資源研究所は12月25日、イネの特定の遺伝子を外来有用遺伝子にそっくり置き換える技術を開発したと発表した。「動く遺伝子」と呼ばれる昆虫の特殊な遺伝子配列を利用、痕跡を残すことなく遺伝子の置き換えに成功した。昆虫や動物ではすでに利用されている技術だが、植物では世界で初めて。農作物の新しい品種改良手法として、今後は小麦やトマトなど他の農作物にも利用できるようにする。

 

■小麦やトマトなど利用拡大探る

 

 同研究所は2007年にイネを用いて狙った特定の遺伝子を、有用遺伝子に置き換えるジーンターゲティング法を開発した。ただ、従来は薬剤耐性を持つなど特殊な遺伝子しか置き換えに使えなかった。薬剤耐性など目印になる遺伝子の文字配列(塩基配列)を遺伝子に付ければ置き換えられたが、目印にした塩基配列が残るなど痕跡が残り、必要な遺伝子だけを残すことはできなかった。

 これに対し今回、ゲノム(全遺伝情報)の中を移動する性質を持つ「動く遺伝子(トランスポゾン)」と呼ばれる特殊な塩基配列を利用した。動く遺伝子は特別の酵素を作用させると、ゲノム内を移動したり外に飛び出したりする性質をもつ。今回この現象を利用することで、置き換えの際の痕跡が残らないことを突き止めた。

 実験では、イネに除草剤耐性を与える遺伝子の配列中に昆虫から抽出した「ピギーバック」と呼ばれる動く遺伝子を入れ、ジーンターゲティング法によってイネの元の遺伝子と置き換えた。そのうえで特殊な酵素を用いたところ、余分な塩基配列は残らず必要な除草剤耐性遺伝子だけが残っていることが確認できたという。

 同研究所は、除草剤耐性遺伝子だけでなく、他のいくつかの遺伝子についてもこの手法が使えることを確認しており、標的とする遺伝子の性質やゲノム上の位置に関わらず広く利用できるとみている。そのため同研究所は、イネ以外の作物でも遺伝子を望み通りに迅速に改良することが可能で、有力な品種改良技術になると期待している。

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