縦の力に強く横にしなやかなヒドロゲル材料開発
―軟骨同様の静電反発力を取り入れて実現
:理化学研究所/物質・材料研究機構(2014年12月30日発表)

 (独)理化学研究所と(独)物質・材料研究機構、東京大学の共同研究グループは12月30日、静電反発力を利用して構造補強した、ユニークな物性を持つヒドロゲル材料を開発したと発表した。

 

■防振材料や軟骨の代替材料など応用期待

 

 新材料は縦方向の大きな荷重に耐えつつ、横方向には容易に変形するという、通常の材料では実現しにくい特異な機械的性質を示す。振動を遮断する防振材料や軟骨の代替材料など幅広い応用が期待できるという。

 ヒドロゲル材料は身近にいろいろあり、寒天、ゼリー、豆腐、こんにゃくなどはその例。水によくなじむ物質が3次元の微細な網目構造を形成していて、この網目の中に水分子が閉じ込められて流動性を失い、系全体が固体状になっている。

 研究グループは、水中に分散した微細なシート状の酸化チタンに磁場を加えると、すべての酸化チタンナノシートが磁場に対して垂直に配向すること、また互いに面と面を向き合わせたナノシート間に、向きのそろった巨大な静電反発力が現れることを発見した。

 酸化チタンナノシートの配向は、磁場を解除すると次第に消失してしまうことから、研究グループは磁場をかけた状態でビニルモノマーを重合反応させて配向構造を化学的に固定し、水分散液をゲル化することで、静電反発力によって構造が内部から支えられたヒドロゲルを得た。

 静電的な反発力を巧みに利用した典型的な材料は軟骨組織で、ひざ関節軟骨は大きな荷重に長年耐え、その間、軟骨同士は驚異的な低摩擦を維持する。今回の研究成果は、静電反発力が構造材料の物性制御に役立つことを実証したもので、関節軟骨の代替材料や、一定方向の振動を絶縁する防振材料、大きな荷重に耐えるタフな材料の開発などに有用としている。

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図

ヒドロゲルの防振機能。ヒドロゲルよりなる3本の柱の上にガラス板を置き、鉄球を置いた状態で、地面より水平方向の振動を与えた。aは、水平方向に配向したナノシートを内包するヒドロゲルで、振動が効率よく遮断され、ガラス板、鉄球は安定。bは、垂直方向に配向したナノシートを内包たもので、ガラス板や鉄球はすぐに落下(提供:(独)物質・材料研究機構)