目盛り誤差1nm以下の「ものさし」を実現
―リニアエンコーダー高精度化、半導体の超微細加工に威力
:産業技術総合研究所/ニコン(2014年11月10日発表)

 (独)産業技術総合研究所と(株)ニコンは11月10日、目盛り誤差が1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下の高精度な「ものさし」を共同で実現したと発表した。超LSIなどの製造に欠かせない半導体の微細加工に応用すれば、半導体回路の配線の一層の微細化・高密度化につながる。スマートフォンやタブレットなどの電子機器をより小型で高速、低消費電力化できると期待している。

 

■誤差が±0.3nm以内を実証

 

 実現したものさしは、高精度加工機械などに組み込まれる「リニアエンコーダー」と呼ばれる装置。長さや位置の精密測定のために半導体加工装置などに使われており、高精度化が進んでいる。しかし、これまで1nm以下の誤差を評価する技術がなく、どこまで高精度化できたかを調べる手段がなかった。

 そこで今回、産総研がこれまでに確立した0.1nm以下の誤差で長さを測定できる技術を、ニコンが開発したリニアエンコーダーの評価に応用する共同研究を実施した。

 実験に用いたリニアエンコーダーは、4μm(マイクロメートル、1μm100万分の1m)間隔で線を刻んだ板にレーザー光を照射、その反射光と元のレーザー光との干渉光を電気的に検出する。板の移動距離に応じて周期的に強度が変化するこの干渉光の信号を捉えて板の位置を測定する仕組みだ。

 この位置決めの精度を評価するために、産総研の技術を用いて板を固定した台の移動距離の誤差評価装置を開発した。この装置もレーザー光を利用し、移動する台からの反射光と元のレーザー光の干渉光強度から誤差を検出する。

 実験の結果、移動台が動く範囲である14μmにわたって誤差が周期的に変動、その大きさは±0.3nmの範囲だった。変動する周期は、リニアエンコーダーが刻線を読み取る間隔2μmと一致。このことから、リニアエンコーダーの誤差が±0.3nm以内であることが実証できたという。

 産総研は、今回の誤差評価装置について「リニアエンコーダー以外の長さ測定装置の評価にも容易に応用できる」として、市販の変位計の誤差評価サービスなどに利用する予定だ。

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リニアエンコーダーと誤差評価装置(提供:(独)産業技術総合研究所)