
左のキクが開花する条件のもとでもアンチフロリゲンを過剰に発現する右の遺伝子組換え体では開花しない(提供:花き研究所)
(独)農業・食品産業技術総合研究機構の花き研究所と香川大学は10月1日、秋に花を咲かせるキクがどのように開花時期を制御しているかを解明、開花を抑える物質とその遺伝子を世界で初めて突き止めたと発表した。キク以外の植物の開花調節の仕組み解明にもつながり、花の咲く時期を自由に制御する技術に道が開かれると期待している。
■開花抑制物質が葉で作られ茎へ
切り花の約40%を占めるキクの生産では、開花時期の調整では日に当てる時間を調節する技術が広く使われているが、その仕組みは未解明だった。開花を促すタンパク質「フロリゲン」はすでに知られているが、これだけでは開花の仕組みが十分に説明できず、開花を抑制する「アンチフロリゲン」の解明が課題となっていた。
研究グループは、日が長く開花できない条件下でキクの体内で活発に働く候補遺伝子を抽出、遺伝子組み換えでその遺伝子が過剰に働くようにした。この結果、通常ならキクが開花する条件下でも花が咲かないものがあった。これを詳しく調べたところ、開花を抑制するタンパク質が主に葉で作られて茎の先端に送られ、アンチフロリゲンとして作用していることがわかった。
開花を促すフロリゲンは、これまでの研究から茎の先端で特定のタンパク質と結合して花芽を作る遺伝子群を働かせることが知られている。今回の研究では、アンチフロリゲンもこの特定タンパク質と結合し競合するため、アンチフロリゲンの量がフロリゲンより多くなると花芽の形成が抑制されることがわかった。
また、キクは暗くなってから一定時間後に赤い光を照射することで開花時期を調節できるが、今回の研究ではキクは自ら時間を計測、赤色光を感知して体内で作るフロリゲンとアンチフロリゲンの量を調節していることもわかった。
研究グループは、「開花を決める仕組みに積極的な開花抑制機構があることが明らかにできた」として、将来的に需給バランスに応じた農作物の安定生産などに役立つと期待している。