（独）産業技術総合研究所は9月30日、結晶のような規則的な構造を持たないとされるアモルファス金属酸化物の構造に単純な秩序があることを見出したと発表した。メモリーの絶縁膜や太陽電池の透明電極など電子素子の材料設計を原子レベルで高度化していくための有力な指針になると期待している。同研究所ナノシステム研究部門の西尾憲吾主任研究員、中村恒夫主任研究員、宮崎剛英研究グループ長の研究グループが、量子力学に基づく原子配列の理論計算などをして突き止めた。
■材料構造のバラつきを抑制へ
研究では、まず一種類の元素からなる物質の多くが一定の体積の中により多くの原子を詰め込めるような結晶構造をとっていることに注目。アモルファス金属酸化物では、金属原子と酸素原子がそれぞれ別々にこうした構造を形成、両者が組み合わさることで全体の構造を作っていると予想した。
そこで酸化アルミニウムや酸化シリコンなどの金属酸化物について、金属原子と酸素原子が別々にこの構造をとっているとして理論的に解析、両者を組み合わせたところ、金属の種類や酸素の含有量とは関係のない共通した構造があることがわかった。
これによって、今まで以上の高い精度でアモルファス金属酸化物の材料設計が可能となり、材料内部の構造のバラ付きを原子レベルで抑えることができるようになるという。従来はアモルファス金属酸化物の内部構造のバラつきを小さく抑えることが困難で、省電力化や高性能化を進めるために必要な電子素子のナノ（10億分の1）メートルサイズへの微細化を実現する際の壁になっていた。
研究グループは今後、この成果をナノメートルサイズの電子素子に使われる絶縁膜や透明電極など、さまざまなアモルファス金属酸化物の原子構造の合理的な設計手法につなげていきたいとしている。
