半世紀前に予想の強誘電構造相転移の確認に成功
―オスミウム酸リチウムを合成し物性など調べる
:物質・材料研究機構/英・オックスフォード大学/東北大学

 (独)物質・材料研究機構は9月23日、英オックスフォード大学と東北大学の研究者と共同で、約半世紀前に理論的に可能と予想された「強誘電構造相転移」という相転移を実験的に確認したと発表した。

 

■ニオブ酸リチウムと同型の構造に着目

 

 構造相転移は、固体の氷が液体の水に、液体の水が気体の水蒸気に変化するような相転移現象の一種で、温度、圧力、電場、磁場などの変化に伴って起きる結晶などの個体の構造変化を指す。強誘電構造相転移は、固体中で電荷が偏って分布する、いわゆる強誘電性の発現を伴う相転移。
 金属は伝導電子を持つため、誘電分極は原理的に発生せず、強誘電体は例外なく電気的絶縁体だったが、1965年に米国ベル研究所の研究者が、強誘電性を伴う構造相転移は、電気的絶縁体に限らず、伝導電子を持つ合金や金属的な化合物中でも可能であることを理論的に示した。
 伝導電子存在下のこの相転移は特に「金属強誘電転移」と呼ばれ、以来その探索が続けられていた。
 研究チームは、強誘電体として広く用いられているニオブ酸リチウム(LiNbO3)と同型の結晶構造を持つオスミウム酸リチウム(LiOsO3)を合成、この新物質の物性や構造を調べたところ、オスミウム酸リチウムは極低温まで金属伝導性を保ち、その構造相転移は、半世紀前に予想された金属強誘電転移に相当するものであることが確認されたという。
 強誘電性を伴う構造相転移が伝導電子と強く結合すると高温超電導を導く可能性があり、研究の新たな進展が期待されるとしている。

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