(独)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は8月15日、ベトナムのメコンデルタで地元の養豚農家を対象に進めている自宅で豚の排せつ物からバイオガスを作り調理などの燃料にするクリーン開発メカニズム(CDM)事業が日本、ベトナム両政府の承認を経て同日国連のCDM理事会に登録されたと発表した。
CDMは、Clean Development Mechanismの略称。先進国が技術や資金を出して開発途上国で地球温暖化防止に結びつく温室効果ガスの削減事業を行った場合、その削減された温室効果ガス相当量を先進国側の温室効果ガス排出削減分に充当できるという制度。
メコンデルタは、メコン川河口に広がる面積が4万km2に達する低湿地帯で、養豚からの排せつ物が処理されないまま水路などに投棄され、環境汚染が深刻化している。
今回国連のCDM理事会に登録された事業は、メコンデルタに位置するカントー市の養豚農家961戸に「バイオガス・ダイジェスター(BD)」と呼ばれる豚の排せつ物を発酵させてメタンを主成分とする可燃性のバイオガスを発生させる装置をJIRCAS側が設置し、養豚農家が調理などに使っている薪や化石燃料をそのバイオガスに代替するのが目的。
JIRCASによると、BDを961戸の養豚農家に設置することで温室効果ガスの排出を1年間に平均1,203t(炭酸ガス換算)削減でき、豚の排せつ物による水質汚濁や悪臭の発生なども軽減できるという。
JIRCASは今後、このベトナムでのクリーン開発メカニズム事業に参加を希望する企業を日本国内から募集していく計画で、参加企業にカントー市の養豚農家のBD設置費用などを助成してもらう方針。
JIRCASは、事業開始1年後からこの事業による温室効果ガス削減量を国連のCDM理事会に申請して「炭素クレジット(CER)」(温室効果ガスの排出削減量証明)を取得し、そのCERを参加企業に配分、わが国の温室効果ガス排出量削減目標達成に貢献していくとしている。
No.2012-33
2012年8月13日~2012年8月19日