(独)産業技術総合研究所は2月13日、商品情報の認識・管理などに用いられる「RFIDタグ」のUHF(極超短波)アンテナをフレキシブルフィルムに簡便に印刷形成できる技術を太陽ホールディングス(株)と共同で開発したと発表した。
RFIDタグは、物体の識別に使われる微小な無線ICチップのこと。新技術は、これまでの製法に比べてコストを大幅に低減できるため、UHF-RFIDタグを低価格商品にまで普及させることが期待できるという。
近年商品の産地情報、品質情報などのトレーサビリティ(追跡可能性)が重要視されている。その一翼を担うRFIDタグは、商品に張り付けて用いることが多いことからそのコストは商品価格に含まれるため、タグのコスト低減が求められている。
今回開発したのは、PET(ポリエチレン・テレフタレート)やポリイミド、紙などのフレキシブルフィルムの上に、UHF電波で情報を授受するUHF-RFIDアンテナのパターンを安価な材料を用いて安価な製法で形成する技術。現行のRFIDタグのアンテナ作製プロセスには、真空蒸着やエッチングが必要で、これがコスト増の一因になっている。そこで安価な印刷プロセスへの転換が試みられているが、印刷プロセスで使われている現行の導電性ペーストは高価な銀を主体とするため材料面でのコスト問題を抱えていた。
新製法は、アンテナパターンのスクリーン版を用いてフィルムに金属ペーストをまず印刷する。次にパターンを乾燥させた後、金属ペーストパターンの表面を圧力を加えながら焼成(加圧焼成)するというもの。産総研が開発したこの加圧焼成技術に、太陽ホールディングスが開発したアルミニウムペーストや銅ペーストを適用することで高品質で安価なアンテナパターン形成が可能になったという。一般にアルミニウムや銅の粒子は、表面が酸化されており、粒子間で金属接合を形成することは困難とされている。今回、両者の技術の組み合わせによりこの問題を克服した。
UHF帯のRFIDタグは、送受信機と数m離れていても送受信可能であり、高速・大量に商品情報を授受処理できるという特徴がある。研究チームは今後、生産ライン向けの加圧焼成処理装置を開発し実用化したいとしている。
No.2012-7
2012年2月13日~2012年2月19日