高温超電導体で起きる様々な異常現象の説明に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は2月14日、高温超電導体で起きる様々な異常現象を統一的に説明することに成功したと発表した。従来の理論では、物質中の電子の振る舞いは電子の密度が変わっても変化しないとしていたが、電子の密度によって振る舞いが変わると考えれば異常現象も統一的に理論的な説明ができるという。高温超電導が起きるメカニズムの解明に向けて大きく前進すると期待している。
 金属は、電子の密度が増えると電子同士の反発力のために絶縁体に変身する「モット転移」と呼ばれる現象を起こすことがある。この時、従来の理論では説明が難しい「擬ギャップ」や「フェルミアーク」などと呼ばれる異常現象が数多く見られることが知られている。一方、高温超電導現象もこの時に現れるため、この転移が高温超電導のメカニズムと深く関係していると見られていた。
 従来の金属の理論では、金属中で電子の電荷と、磁石としての性質「スピン」はそれぞれ独立に振る舞うことはないとしている。ところが、モット転移が起き金属が絶縁体になると、独立に振る舞うよう変化する。従来の理論では、こうした電子の振る舞いの変化を正確に取り扱うことはできなかった。
 これに対し今回、モット転移が起きる時の電子の状態をスーパーコンピューターによって解析したところ、電子の電荷とスピンの振る舞いが分離して独立した形となり、そのことがモット転移付近で様々な異常現象を引き起こしていることが分かった。
 同機構は、今回の研究について「高温超電導のメカニズム解明には至っていないが、高温超電導の研究で最も問題になっていた異常な振る舞いの謎が解け、メカニズム解明への道筋が開けた」といっている。

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