高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構は1月20日、昨年3月の東日本大震災で被災した両機関の共同運営施設である東海村(茨城)の大強度陽子加速器施設(J-PARC)の震災復旧作業とチェックが終了し、1月24日から施設利用実験を再開すると発表した。
東海村の約65ha(東京ドーム約14個分)の敷地内に3台の大型陽子加速器と各種実験研究施設を持つJ-PARCでは、今回の大震災で震度6弱の揺れを受け、建物周辺の地盤沈下、道路陥没、給排水路の断裂、地下埋設電源ケーブルの破損などが生じたものの、致命的な被害は免れた。
しかし、1mm以下の誤差で精密に並べてあるリニアック(直線加速器)やシンクロトロン(円形加速器)の数百台の加速空洞や電磁石などの機器の位置が上下左右に数mm~数cmズレ、加速器の運転ができなくなってしまった。このため、運営体であるJ-PARCセンターは、昨年5月に復旧計画を策定し、1日でも早い運転再開を目指し復旧工事を進めてきた。
加速器電磁石や加速空洞の復旧工事では、1台毎に精密な位置測定を実施、全て許容範囲内まで戻し、一部機器は再設置した。大きくて重い放射線遮蔽体のズレも1個1個取り外して修復、一部の架台は基礎を打ち直した。こうした作業の後、リニアックは昨年12月9日から、大小2台のシンクロトロンは同12月18日と22日から、それぞれビーム試験を開始。さらに、物質・生命科学実験装置、ニュートリノ実験装置でも中性子やニュートリノの発生を昨年12月中旬に確認したことから、待望の施設利用実験再開となった。
No.2012-3
2012年1月16日~2012年1月22日