(独)農業・食品産業技術総合研究機構は1月18日、葉枯(はがれ)病に強く、多収穫のハトムギの新品種「とりいずみ」を開発したと発表した。 ハトムギは、名称とは異なり麦の仲間ではなく、トウモロコシに近いイネ科の作物で、茎や葉の形はトウモロコシに似ている。古くから、漢方薬として利用されるなど健康食品として知られており、最近はハトムギ茶や雑穀米の原料として需要が増加している。 ハトムギは、昭和56年ごろから水田転作作物として本格的に栽培が進められ、栽培地は北海道から大分まで広がり、国内生産高は1,000トン程度(平成22年)になった。しかし、栽培面積が拡大する一方、温暖化の進展による影響で病害の葉枯病の発生が増加し、関東以西では葉枯病に弱い品種の作付けができなくなった。さらに最近は、東北地域でも発病が認められるようになってきた。 同機構は、韓国から導入された品種と、岡山在来の草丈を低くした系統とを交配し、葉枯病に強く、しかも我が国の既存の主要品種「あきしずく」並みの多収の新品種「とりいずみ」を育成することに成功した。 新品種「とりいずみ」は、「あきしずく」と成熟期が同じで、関東から九州までの広い範囲で栽培できる。「とりいずみ」は、不稔粒(ふねんりゅう:実が入っていない粒)が少ないのも特徴。このため、製茶時の歩留まりが良く、茶の風味が良好なので、良質の茶の原料に最適という。 これまでの鳥取県農林総合研究所での試験でも、「とりいずみ」の多収性と葉枯病抵抗性の長所が認められた。今年から鳥取県東部地域で作付けが開始され、最終的には鳥取県の主要品種になる予定。鳥取県では、さらに、「とりいずみ」を原料にしてペットボトル茶やお粥などを試作している。 また、福岡県でも、久留米市のハトムギ栽培地域で普及が進み、作付けの半分程度が「とりいずみ」に置き換わる予定になっている。
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成熟期の新品種「とりいずみ」(左)と、既存の「あきしずく」(提供:農業・食品産業技術総合研究機構) |
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