イネの新しいウイルス病を我が国で初めて確認
:農業・食品産業技術総合研究機構

 (独)農業・食品産業業技術総合研究機構は11月2日、同機構の九州沖縄農業研究センターが、イネの新しいウイルス病であるイネ南方黒すじ萎縮病(仮称)の発生を我が国で初めて確認したと発表した。
 イネ南方黒すじ萎縮病は、近年、中国南部やベトナム北部で発生が急増しているイネの新しいウイルス病で、病原ウイルスであるSouthern rice black-streaked dwarf  virus (仮称、略称:SRBSDV)は、主にセジロウンカによって媒介される。 
 セジロウンカは、毎年梅雨時期に梅雨前線に沿って吹く下層ジェット気流に乗って我が国に飛来する。セジロウンカの飛来源に当たる中国南部やベトナム北部では、2008年以降、SRBSDVによるイネ南方黒すじ萎縮病の発生が増加傾向にあることから、我が国でもこの新種の萎縮病の発生が心配されていた。
 九州沖縄農業研究センターでは、今年3月に中国の広東省・海南省で、また4月に北ベトナムで、イネ南方黒すじ萎縮病の発生状況の調査と情報収集を行い、6月に各県の病害虫防除所にイネ南方黒すじ萎縮病の症状などの情報を提供してきた。
 こうした対策をとっていたところ、8月に熊本県内の水田において、家畜の飼料用に栽培されるイネである「北陸193号」、「タカナリ」に、株の萎縮、葉先のねじれ、葉脈の隆起などイネ南方黒すじ萎縮病に感染したイネに特徴的な症状が認められた。
 同研究センターでは、このような症状を示すイネが、SRBSDVに感染しているかどうかを明らかにするために、遺伝子診断法の一つである「RT-PCR法」によりウイルスを検出する方法を開発して検査を行った。
 検査では、株の萎縮、葉先のねじれ、葉脈の隆起などの症状を示すイネから、SRBSDVに特異なDNA(デオキシリボ核酸)を検出し、DNAの塩基配列を解読した。また、SRBSDVに感染したとみられるイネを用いてセジロウンカによる健全なイネへの媒介試験を行った結果、イネ南方黒すじ萎縮病に特異的な症状が再現されることを確認した。こうしたことから、我が国でもSRBSDVによるイネ南方黒すじ萎縮病が初めて発生したことが確認された。
 同研究センターでは、今後、我が国の主要なイネの栽培品種についても調査を行い、イネ南方黒すじ萎縮病の被害軽減技術の開発を行う予定。

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