(独)物質・材料研究機構は9月21日、機械・装置類の摩擦力を低減できる材料コーティング技術を開発したと発表した。酸化亜鉛の結晶の向きをうまく制御して薄膜状にコーティングするというもの。自動車や航空機、発電機をはじめ各種装置に使われている駆動部のエネルギーロスを減らせるため、省エネの面から注目を集めそうだ。
同機構の研究チームは、材料表面に薄膜などを形成するスパッタリング装置に独自の改良を加えて「コンビナトリアルスパッタコーティング」と呼ぶ装置を開発した。これを用いて酸化亜鉛の結晶の向き(結晶配向性)を正確に制御し、材料表面をそれによってコーティングすることに成功した。
このコーティング膜を大気中、真空中、油中の環境下で試験したところ、油と真空の中では材料の摩擦係数が小さくなることが分かった。また、通常の材料とは異なり、油の中で摩擦面にかける荷重を増やしたり、材料同士を擦り合わせる回数(往復摺動回数)を増やしたりすると、それらの増加につれて摩擦係数が小さくなることを発見した。
これについて研究チームは、圧電効果(分極)を示す酸化亜鉛の作用で反発力が生じ、高荷重ほど摩擦係数が小さくなると見ている。また、大気中では、材料表面に吸着している多数の水分子によって圧電効果が打ち消されるのではないかと推定している。
摩擦力を低減できる低摩擦材料は、機器の省エネ化につながることから、同機構では新技術が省エネ社会の実現に貢献すると期待している。
No.2010-37
2010年9月20日~2010年9月26日