(独)物質・材料研究機構は9月20日、高効率・小型の固体酸化物燃料電池(SOFC)を可能にする新素材を開発したと発表した。
開発したのは、燃料と酸素を分離しながら化学反応させる電解質用の「イットリウム添加ジルコン酸バリウム(BYZ)」薄膜。作動温度として350ºCを実証、SOFCの幅広い実用化に欠かせないとされる700ºC以下という条件を大きくクリアした。
電池の効率に大きく影響するプロトン伝導率でも今までにない最高性能を達成、同機構は携帯電話やノートパソコンなど小型電子機器向け携帯用電源への応用に道を開くと期待している。
開発したのは、同機構国際ナノアーキテクト研究拠点とローマ大学(イタリア)の共同研究グループ。
薄膜に用いたBYZは、材料そのものの性質としてはプロトン伝導率が非常に高いことは知られていた。しかし、結晶性が悪く薄膜にしたときの結晶粒子が小さいために結晶粒界の影響が大きくなり、それがプロトン伝導率向上の大きな障害となっていた。
これに対し研究グループは、「パルスレーザー堆積法」と呼ばれる手法を利用して結晶粒界のない高品質薄膜を作ることに成功、BYZ本来の高いプロトン伝導率を実現した。
実験では、作動温度が350ºCの低温でも実用化に必要な最小伝導率を実現できることを確かめた。
SOFCは、高効率燃料電池として期待されているが、一般に作動温度が800~1,000ºCと高く、広く実用化するにはこの温度を下げることが課題とされている。特に小型電子機器向けに実用化するには、450ºC以下の作動温度が必要と見られている。
No.2010-37
2010年9月20日~2010年9月26日