有機分子わずか8個からなる極小超電導体を発見
:産業技術総合研究所/米国オハイオ大学

 (独)産業技術総合研究所は7月20日、米国オハイオ大学と共同でわずか8個の有機分子からなる長さ3.5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の極小超電導体を発見したと発表した。この成果は、電子や原子、分子の集団的な物理現象である超電導現象が構造体のサイズとどのように関係しているかを明らかにする研究の一環で得たもの。今後、新しい超電導材料の開発やナノスケールの電子回路の配線技術への応用が期待される。
 用いた材料は、6K(-267ºC)以下で超電導を示す有機分子として知られる「(BETS)2GaCl4」という物質。この内、超電導を担うのは、2分子のBETS(ビス(エチレンジチオ)テトラセレナフルバレンの略称)を1ユニットとする部分だが、実験ではこれが鎖のように一軸方向につながるよう銀の平面基盤上に(BETS)2GaCl4結晶を形成した。この有機分子結晶の超電導特性が結晶の構造体サイズ、つまりユニット数がいくつつながっているかによってどう変化するかを調べたところ、最も小さいものでは4ユニット(BETS分子の数にして8つ)だけがつながった有機分子結晶でも超電導の前兆現象といわれるギャップ構造が観測できたという。
 電気抵抗については、まだ確認していないが、今後有機分子8個という極小超電導体で電気抵抗ゼロが確認できれば、超高密度・超微細化が進む電子回路でナノスケールの配線材料や様々な超電導素子を実現する道が開けると産総研は期待している。常伝導を用いた従来の配線材料を用いてナノスケールの素子を実現しようとしても、配線の電気抵抗による発熱のために素子が焼き付いてしまうなどの問題があった。
 この成果の詳細は、英国の科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」の2010年3月28日号に掲載された。

詳しくはこちら

BETS分子の構造式(上)と分子構造(提供:産業技術総合研究所)