(独)産業技術総合研究所は6月28日、(独)国立成育医療研究センター、川崎重工業(株)と共同で、分化しやすく、熟練者でなければ培養が難しいヒトiPS細胞(iPS細胞:人工多能性幹細胞)の自動培養に世界で初めて成功したと発表した。 iPS細胞は、人の皮膚などの体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより作られる神経や肝臓など様々な細胞や組織になる能力を持つ万能細胞で、病気の原因の解明や新しい薬の開発、細胞移植治療などの再生医療への活用が期待されている。 他の細胞に分化しやすいiPS細胞は、現在、熟練した研究者が顕微鏡を用いて細胞の状態を観察し、細心の注意を払って細胞を分化させないよう、状態の良い細胞のみを選んで培養を行っている。 実際に薬の開発や医療に使用する実用化に向けては、安定して大量に培養できる技術の確立が必要とされている。また、iPS細胞の自動培養には、熟練した研究者の培養技術を装置で再現し、安定的に培養を継続できることが求められている。 今回、新しく開発した細胞自動培養装置は、高さ2.1m、横幅2.2m、奥行き1.4mの大きさで、ロボット技術と画像処理技術を活用している。研究グループは、この装置を用いてiPS細胞を自動培養することに世界で初めて成功した。 また、これまで熟練した研究者が行っていたiPS細胞の分化・未分化の判断を自動化し、未分化の細胞のみを回収してさらに増やすことも可能にした。 川崎重工は、この装置で3カ月間培養を継続し、安定的に自動培養できることを実証、成育医療研究センターと産総研は、各種の検査を行い培養された細胞が未分化のiPS細胞であることを検証した。 この細胞自動培養装置は、6月30日から7月2日まで東京ビッグサイト(東京・有明)で開かれた「国際バイオEXPO」で一般に公開された。 詳しくはこちら |  |
新開発の細胞自動培養装置(提供:産業技術総合研究所) |
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