(独)農業環境技術研究所は4月7日、ウッドランド・トラスト(英国)、ポズナン・ライフサイエンス大学(ポーランド)、ケンブリッジ大学(英国)と共同で、英国全土の250年にわたる記録から植物群集の開花時期の変化を示す指数を開発したと発表した。
英国では、全土で1753年から断片的に蓄積されてきた約40万件に及ぶ植物405種の開花日の記録が整備されている。今回の研究では、このデータに「階層ベイズモデル」と呼ばれる統計モデルを適用して、植物群集全体の平均的な開花時期の変化を表す指数と、種ごとの指数を開発した。
階層ベイズモデルは、様々な植物種の開花日データから、群集全体での開花時期の変化を表す指数を推定することができる。
開発された1753~2009年の開花時期指数によって、英国の植物群集は直近の25年間に最も早い開花時期を示していることが明らかになった。さらに、2~4月の全国平均気温が1ºC.上昇するごとに開花時期は約5日早くなることが示された。
また、種ごとの開花時期変化を示す指数により、たとえば英国の農地でよく見られる西洋サンザシ「ホーソーン(Hawthorn)」やスモモの仲間「スピノサスモモ(Blackthorn)」も、直近の25年間に最も早い開花時期を示していることが明らかになった。
植物の開花や鳥類の渡りに代表される生物の季節的な事象が、気候変動に応じて変化していることは、これまで多くの研究によって報告されている。しかし、生物群集全体での季節的事象の変化を定量化する試みは、これまで行われていなかった。
世界的に進行する生物多様性の損失を防ぐため、2002年オランダのハーグで開催された第6回生物多様性条約締約会議(COP6)で、生物の損失速度を2010年までに顕著に減少させるという「2010年目標」が採択されている。
今年10月に日本で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、2010年目標の達成程度や2010年以降の次期目標(ポスト2010年目標)について検討が行われる予定になっている。今回の研究で開発された植物の開花時期指数は、気候変動が生物多様性に与える影響を表す指標の一つとして今後活用されることが期待される。
この研究成果は、英国王立協会紀要の電子版に4月7日に掲載された。
No.2010-14
2010年4月5日~2010年4月11日