ジョセフソン素子の量子状態を制御する新たな方式を発見
:産業技術総合研究所/北海道大学/名古屋大学など

 (独)産業技術総合研究所は3月15日、強磁性絶縁体を高温超電導体で挟んだジョセフソン接合素子で、強磁性絶縁層の厚さが1原子層変わる毎に素子全体が「O接合」と「π(パイ)接合」と呼ばれる量子状態を交互に現すことをシミュレーションで発見したと発表した。
 (独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の一環として、北海道大学、名古屋大学、オランダの大学の研究陣と共同で行った研究の成果。
 今回のシミュレーションに用いた手法は、ジョセフソン接合素子の特性解析のために開発したもので、独自の格子モデルを用いて接合素子に流れるジョセフソン電流(トンネル電流)を計算した。これまでに鉄などの強磁性金属を挟んだジョセフソン接合素子では「π接合」と呼ぶ量子状態が現れることが知られていたが、今回は強磁性絶縁体を挟んだ場合をシミュレーションした。その結果、強磁性絶縁体層の厚さが1原子層変わる毎にジョセフソン結合素子全体の量子状態が交互に変わることが分った。
 具体的には、原子層の厚さが1、3、5・・・といった奇数の場合には「π接合」になり、2、4、6・・・のような偶数の場合は「O接合」という量子状態になる。
 強磁性絶縁体を挟んだジョセフソン接合素子でも「π接合」が現れることが分ったのはこれが初めて。1原子層変えるだけでジョセフソン接合素子全体の量子状態を制御できれば、その応用は種々考えられる。
 例えば、量子コンピューターでは「0」と「1」の重ね合わせ状態である「量子ビット」を最小構成単位とするが、従来法ではその実現には外部からノイズ無しで磁場を加えねばならないという難問があった。強磁性絶縁体で「π接合」ができれば、外部から磁場を加える必要がなくなり、外部ノイズに影響されない「量子ビット」ができる。
 同研究所は、今後、より現実的なシミュレーションで素子特性を最適化して、「量子ビット」の実現を目指す。

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