(独)産業技術総合研究所は3月15日、川崎重工業(株)と共同で、将来大きな成長が期待される再生医療向けに、多人数の細胞を同時に高品質で、しかも高い効率で完全自動培養する「細胞自動培養ロボットシステム」の実用機を開発したと発表した。 再生医療とは、病気やけがなどで機能を失った臓器や組織を、培養した細胞や組織を使って回復させる先端医療をいう。現在の細胞培養は、GMP(医薬品や医薬部外品の製造管理・品質管理の基準)に基づいた細胞調製室(医療で使用する細胞を培養するためのクリーンルーム)を使用し、高度な熟練技術者の手作業によって行われている。 また、他人の細胞の混入や細胞間の感染などを防止するため、細胞調製室内での培養は、1室当たり1人分に限られており、細胞培養の能力不足が本格的な再生医療の実現に大きな障壁となっている。 今回開発したシステムは、2台のクリーンロボットが並行動作を行うことで、熟練技術者の複雑な動きを再現し、培養作業の完全自動化を図ると共に、過酸化水素蒸気による除染機能を装備し、装置内を常に無菌状態に保つことで、多人数の細胞を同時に取り扱えるようにして、高品質で高効率な細胞培養を実現した。 また、培養以外の作業についても、装置内で手作業ができるよう人の介入機構を装備し、広く色々な方面で利用できるよう使用システムの汎用性を高めている。 さらに、画像処理により、細胞の培養状態を判断する自動判定機能や、ユーザーの運用をサポートする遠隔監視機能を備えるほか、生産現場で培った生産管理技術を応用し、培養スケジュールの柔軟性や細胞の履歴管理など、医療現場の要求にも対応している。 詳しくはこちら |  |
再生医療向けの「細胞自動培養ロボットシステム」(提供:産業技術総合研究所) |
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