生体の階層構造を模倣したナノシステム材料を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は12月14日、生体の複雑な階層構造を模倣したナノシステム材料の作製技術を開発したと発表した。酸化銅、酸化亜鉛などを素材に階層構造システム特有の機能を作り出すことができ、さまざまな応用展開が期待できるという。
 生体は、アミノ酸、糖などのnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルの分子が集まってたんぱく質やでんぷん、その複合体などの生体高分子を形成し、それらが集まって細胞内組織を形成し、それらが集まって細胞を形成し、その細胞が集まって臓器や器官を形成し、それらが生体を形成する、といった多重の階層構造になっている。こうした階層構造システムは、ナノ物質の単純な集合体とは違い、それぞれの階層構造がそれぞれの機能を発揮し、複雑で高次な機能を実現している。
 生体の階層構造の工学的模倣に取り組んでいる産総研の研究チームは今回、マイクロメートル(100万分の1m)レベル、サブマイクロメートルレベル、ナノメートルレベルから成る3重階層構造のナノシステム材料を作製することに成功した。
 これまでは、マイクロサイズの球状粒子が規則的に配列した単層コロイド結晶を鋳型(テンプレート)に、そこにナノ材料を蒸着するという方法でマイクロ‐ナノの2重階層構造体を得ていたが、今回、テンプレートの代わりに自己集合というプロセスを用いてマイクロサイズの上にサブマイクロサイズを重ねた構造の2重階層コロイド結晶をまず作製、その上に、レーザーアブレーションという方法でナノ構造を作製してマイクロ‐サブマイクロ‐ナノ3重階層構造を得た。
 酸化銅を素材に3重階層構造ナノシステム材料を作製、その特性などを調べたところ、親水性(ぬれ性)の指標である水に対する接触角がわずか5.2度という超親水性を示したという。
 これまでのマイクロ‐ナノ2重階層構造体で親水性,親油性、光触媒特性、電界放電特性、センサー特性などで階層構造体ならではの特性が認められていることから、研究チームは3重階層構造体ではさらに高度で複雑な特性が新たに見出せるのではないかと期待している。
 今回用いた素材は、酸化銅だが、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化タングステンなどでも作製可能なことを確認しているという。

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