(独)産業技術総合研究所は10月12日、技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構(TASK)との共同研究で、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を樹脂中に分散させる新しい方法を開発し、母材としてゴムを用いた場合、わずか0.01重量%の添加量で導電率をそれまでの100倍にまで上げることに成功したと発表した。
帯電防止材やプリンターの帯電ロールなどに広く用いられている導電性複合材料は、絶縁性の樹脂やゴムに導電性の物質を添加して作製される。しかし、導電性複合材料のほとんどは、樹脂やゴムに比べて硬く、不透明なために、添加量が増加すると樹脂やゴムの持つ本来の透明性や柔軟性が失われるという難点があり、少量の添加で高い導電性を得られる材料が求められている。
産総研は、TASKと協力し、母材中のCNTの構造と分布を制御することによって、少ない添加量で高い導電率を示す導電性複合材料の研究開発を行ってきた。
今回の開発では、母材としてフッ素ゴムを使用し、「スーパーグロース法」と呼ばれる単層カーボンナノチューブ合成法(化学気相成長法)により単層CNTを合成。その単層CNTを、「CNTを含む領域(導電領域)」と「CNTが全く含まれない領域(非導電領域)」ができ、かつ導電領域が連続して導電経路が形成されるようゴムに混ぜ込んだ。
この構造により、導電領域のネットワークが、材料全体に広がり、高い導電性を示し、単層CNTの添加量を少量に抑えながら、導電率をこれまでの100倍にまで向上させることができた。また、ネットワークの隙間には単層CNTを含まずゴムだけからなる非導電領域が存在し、ゴム本来の柔軟性と透明性もほぼ保たれた。
今回開発した方法は、帯電防止や静電気除去のほか導電性を必要とするさまざまな樹脂材料への応用が期待される。
No.2011-41
2011年10月10日~2011年10月16日