「超好熱性古細菌」の酵素が2つの異なる反応進める様子初めて解明
:高エネルギー加速器研究機構/東京大学

 高エネルギー加速器研究機構と東京大学は10月11日、熱水中に生息する「超好熱性古細菌(ちょうこうねつせい・こさいきん)」の持つ酵素がたんぱく質分子の立体構造の一部を変えながら2つの異なる反応を順次進めていく様子を世界で初めて明らかにしたと発表した。今回の成果により、有用な化合物を簡単な化合物から一度に合成できる酵素が見つかることも期待できるという。
 超好熱性古細菌は、温泉や海底の熱水鉱床など100℃以上の環境でも見つかる、生命の共通の祖先に近いとされる微生物。生体内での糖の合成には、通常2種類の酵素が連続的に関わる2段階の化学反応が必要だが、超好熱性古細菌ではこれが1つの酵素だけで進むことが知られていた。しかし、これまでその詳しい仕組みは、未解明だった。
 そこで研究グループは、高エネ研(茨城・つくば市)の大型放射光施設の放射光を利用、酵素の立体構造が糖の合成反応の途中でどう変化するかをX線結晶構造解析で詳しく分析した。実験には、大分県の別府温泉で見つかった超好熱性古細菌「スルホロバス」の酵素を用いた。
 この結果、2段階の反応の前半と後半で、酵素の立体構造が大きく変化していることを突き止めた。この酵素のたんぱく質分子には、触媒の活性中心に3つのループ状構造があるが、第1段階の反応が終わるとこれらのループが大きく動いて、第2段階の反応を活発に進めるよう活性中心の形が変わることが分かった。
 大気中の二酸化炭素(CO2)など無機物から糖などの有機物を作る反応は、生命進化の初期段階で不可欠なものだったと見られている。このため研究グループは、今回の成果が生命進化の解明など基礎科学的にも重要と見ている。

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