安価なリチウムイオン二次電池用正極材料を開発
:産業技術総合研究所/田中化学研究所

 (独)産業技術総合研究所は10月12日、コバルトやニッケルなどの希少金属を含まない安価なリチウムイオン二次電池用正極(陽極)材料を(株)田中化学研究所と共同で開発したと発表した。既存の正極材料並みの性能があり、希少金属の節減とコスト低減が期待できるとしている。
 開発した新材料は、リチウム、鉄、マンガンからなる酸化物材料と、リチウム、鉄、マンガン、チタンからなる酸化物材料の2種。現在のリチウムイオン二次電池の正極材料は、リチウム金属酸化物が主流で、今回の両材料もこの仲間。
 リチウムイオン二次電池は、近年用途の拡大に伴いさらなる高性能化、低コスト化が求められている。なかでもリチウムイオンの供給源である正極材料は、構成部材の中で最も高価なものの一つであり、しかも電池容量や作動電圧を決定づける重要な部材であることから、安価で高性能な材料開発が強く望まれている。
 正極材料に資源が豊富で安価な鉄やチタンを利用する開発を推進してきた産総研は、2009年に田中化学研究所と共同で鉄とニッケルを含むリチウム・マンガン系酸化物正極材料を開発した。今回はそれを踏まえ、高価なニッケルを含まない鉄置換リチウム・マンガン酸化物と、鉄およびチタン置換リチウム・マンガン酸化物の2種の正極材料を開発した。
 試験の結果、充電容量、放電容量は両材料とも既存材料とそん色なく、実用上80%以上が求められる初回充放電効率は両材料共84%を達成した。20サイクル後の放電容量や初期放電容量に対する維持率などの充放電サイクル特性も優れた性能が認められたという。放電エネルギー密度は、コバルトを含む既存の材料に比べると1割強劣るが、エネルギー密度当たりの原材料コストは30%前後低い。
 産総研は今後、高容量化やサイクル劣化抑制、量産技術などの研究開発を進め、2013年頃には実用化を目指したいとしている。

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