松枯れの病原体「マツノザイセンチュウ」のゲノムを解読
:森林総合研究所/同志社大学/英国サンガー研究所など

 (独)森林総合研究所は9月5日、同志社大学や英国のウエルカムトラスト・サンガー研究所などと共同で、世界的な森林病害になっている松枯れの病原体「マツノザイセンチュウ」のゲノム(全遺伝情報)を解読することに成功したと発表した。病原体の特性を遺伝子レベルで解明することにつながり、森林総研は新たな発想に基づく画期的な松枯れ対策技術の開発に道を開くと期待している。
 研究チームは、森林総研、同志社大、サンガー研究所のほか海外の4研究機関で構成、日本で採集したマツノザイセンチュウのゲノムを解析した。同系交配により遺伝的に均一な集団を作成して高純度のゲノムを抽出、その配列を調べた。
 その結果、ゲノム全体で1万8千個の遺伝子が存在することや、他の植物寄生線虫とは異なる独自の寄生戦略を進化させてきたことなどを解明した。たとえば、食物消化やストレス対応に関わる遺伝子が他の線虫に比べて増えていることや、植物寄生に必要な植物の細胞壁を分解する酵素の遺伝子をカビなど他の微生物から取り込んでいる可能性が高いことなどが分かった。
 マツノザイセンチュウによる松枯れは、日本の松林に大きな被害をもたらしているが、近年は欧州や中国にも被害が拡大しており、世界的に新たな発想に基づく画期的な駆除技術の開発が望まれている。

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