電気を蓄えるキャパシターの大容量化に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は9月5日、電気自動車などで蓄電装置として使われるキャパシターの大容量化に成功したと発表した。
 炭素でできたシート状のナノ物質「グラフェン」の層を積み重ね、各層の間にカーボンナノチューブ(CNT)を挟み込んだ新電極を開発することで実現した。
 電気を電子のまま蓄えるキャパシターは、耐久性に優れ、出力密度が大きく、急速な充放電が可能だが、エネルギー密度が低く、大容量化が難しかった。キャパシターのエネルギー密度を上げるには電極の表面積を大きくし、出力密度を上げるには電極材料の導電性を高めないとならない。そんなキャパシター用電極材料として、同機構の研究者はグラフェンに注目した。
 研究グループは、米国ノースカロライナ大学の研究者と共同でグラファイト(黒鉛)からグラフェンシートを作り、積層して、層と層の間(あいだ)にCNTを差し込んだ積層構造キャパシター電極を開発した。CNTは、グラフェンシート面に電気的・機械的に結合した構造になっているので、一つ一つのグラフェン表面に多量の電解液イオンが吸着し、電極のエネルギー密度が飛躍的に増大した。
 このグラフェン積層フィルムと高純度チタンで電極を作り、電解液を含ませて試作したキャパシターの特性を調べたところ、エネルギー密度1㎏当たり62.8Wh(ワット時)、出力密度同58.5kWの高い特性が得られ、電解液がイオン液体の場合にはエネルギー密度が同155.6Whにまで向上したという。この数値は、従来のキャパシター特性を大幅に上回り、現在使われているニッケル水素電池に匹敵する。
 また、開発したグラフェン積層電極キャパシターは、充放電を繰り返しても性能が劣化せず、逆に性能が少し向上することが分かった。繰り返しの充放電でグラフェン積層間への電解液イオンの出入りが高速・多量になり、電解液イオンの吸着量が増えたことによると同機構は見ている。
 このような繰り返し使用によって性能が上がるトレーニング効果の発見は、今回が初めてという。
 研究グループは、グラフェン積層間隔の最適制御などでエネルギー密度を更に2倍以上高めることが可能と見ている。

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