(独)理化学研究所は8月16日、人間の網膜細胞で作られる7,067種類のたんぱく質の遺伝子を含むヒト網膜細胞由来のDNA(デオキシリボ核酸)約16万個を世界中の研究者が利用できるようにしたと発表した。
国立障害者リハビリテーションセンター研究所が視覚障害に関わる遺伝子を探索する研究の一環として解析してきたDNAを、理研のバイオリソースセンターを通じてクローン(複製)として配布する体制を整えた。理研は、世界で170万人いるといわれ最終的に失明に至るとされる網膜色素変性症など、目の遺伝子疾患の原因究明や治療法の研究に貢献できるものと期待している。
網膜色素変性症は、人種や地域に依存せず3,500~4,000人に1人の割合で発症し、日本にも3万人以上の患者がいるといわれる。すでに40種類以上の原因遺伝子が報告されているが、さらに多様な遺伝子が関与していると見られるため、国立障害者リハビリ研は独自に開発した「ベクターキャッピング法」と呼ぶ技術によってヒト網膜細胞で働く遺伝子の網羅的な解析を進めてきた。
具体的には、網膜細胞でたんぱく質を作るのに必要な翻訳領域の塩基配列のみの全長を持つDNAの複製「完全長cDNAクローン」を集めてライブラリーとし、それらの塩基配列を解析した。このライブラリーは、ヒト網膜細胞由来の完全長遺伝子セットとしては最大級のもので、これまで取得困難だった希少な遺伝子や長いサイズの遺伝子の完全長遺伝子を多数含むという。
ライブラリーのcDNAクローンを学術研究などで利用したい場合は、理研のバイオリソースセンターに必要書類と共に申し込めば、100万分の1gを容器に入れて実費で郵送してもらえる。
No.2011-33
2011年8月15日~2011年8月21日