(独)農業生物資源研究所は8月17日、日本のイネとは別系統のアフリカ固有の栽培イネのゲノム(全遺伝情報)の主要部分を解読し、データベースとして公開したと発表した。
世界で栽培されているイネの品種は、日本などアジア諸国を中心に栽培されている「オリザ・サティバ」(略して「サティバ」)と呼ばれる系統と、アフリカ固有の栽培イネである「オリザ・グラべリマ」(略して「グラベリマ」)と呼ばれる系統に大別される。
アフリカ栽培イネのグラベリマは、育種が進んでいないため、現在では食料としての用途は薄れているが、乾燥や病気、害虫への抵抗性が強いことが知られている。このため、グラべリマの持つ強い耐乾性や耐病性、耐虫性の形質を利用して、日本のイネの品種改良に応用できる可能性があると考えられている。
今回の研究では、アフリカのセネガルで採取された「IRGC104038」という系統のグラベリマのゲノムの一部、約2割を解読した。解読には、ゲノムの塩基配列が決定されている日本のイネ「日本晴」のゲノムを参照に利用した。
その結果、6,900万塩基のグラベリマの塩基配列を明らかにし、10,080個の遺伝子配列をほぼ解読した。
また、アフリカ栽培イネにしか存在しないと考えられるDNA(デオキシリボ核酸)配列も見つけ、アジアで栽培されているイネには存在しない遺伝子が複数確認された。これらの違いが、それぞれの栽培種を特徴づけている可能性があることも分かった。さらに、その中にアフリカ栽培イネの耐病性の強さと関連する遺伝子が多く含まれていることも明らかにした。
これらの研究成果は、アフリカ栽培イネとアジア栽培イネの両方の改良に利用できると考えられており、今後、アフリカ栽培イネの持つ強い耐乾燥性や耐病性、耐虫性などを利用したイネの新品種開発に大きく勇献することが期待される。
今回解読したグラベリマのゲノム配列や、ジャポニカ(日本型のイネ)と比較した結果などは、データベース「AfRicADB(African Rice Annotation Database)(http://green.dna.affrc.go.jp/Og/)」で公開するとともに、英国の科学誌「The Plant Journal」に掲載された。
No.2011-33
2011年8月15日~2011年8月21日