イネの遺伝子の発現情報網羅したデータベースを公開
:農業生物資源研究所

 (独)農業生物資源研究所は5月26日、イネの様々な器官で、田植え以降の各生育ステージ(段階)で働いている遺伝子の発現に関する情報を網羅的に解析し、データベース「RiceXPro」 (Rice eXpression Profile databaseの略)として公開したと発表した。
 これまでに国際イネゲノム配列解読コンソ―シアムによって、イネの全塩基配列が解読され、イネのDNA(デオキシリボ核酸)上には約3万2千の遺伝子が存在することが明らかになった。しかし、それらの遺伝子の内、機能が推定されているものは6割程度しかなく、実験的に機能が証明されたものとなると現状では1割にも満たない。
 イネの新品種の育成などに遺伝子情報を利用するには、遺伝子の機能を解明することが必要で、それぞれの遺伝子がいつ、どこで、どの程度働くのかという遺伝子の発現情報は、機能を推測する重要な手掛かりになっている。
 同研究所は、今回の研究で、遺伝子の発現時期を調べるマイクロアレイ解析システムを使い、田植えから刈り取りまでのイネの各生育ステージにおける様々な部位の遺伝子の発現を網羅的に調べ、それらをデータベース化して公開した。
 イネの生育ステージは、葉や分げつ(イネの苗が成長するにつれ根元から次々と新しい芽が出てくること)を増やす時期(栄養生長期)、穂を作る時期(生殖生長期)、花が咲いて種子を作る時期(登熟期)の3つに分けることができる。
 研究では、圃場でイネ品種「日本晴」を栽培し、田植えから刈り取りまでの間、各生育ステージごとに、葉、茎、根、幼穂、花、種子などの器官から、昼夜2回サンプルを採取しマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は、スライドガラス上にそれぞれの遺伝子の特徴的なDNA断片を数千から数十万種類並べて配置し、それぞれの遺伝子断片と結合する配列を持った遺伝子を検出するというもの。  
 この解析から得た遺伝子発現情報を基に、データベース「RiceXPro」を構築し、公開した。RiceXProでは、キーワードなどを用いた検索機能によって遺伝子がどの器官、組織、あるいはどの生育ステージで発現しているかを調べることができる。
 今後は、さらに、植物ホルモンを処理した時や、環境ストレス条件下の遺伝子発現情報の解析にも取り組み、得られた情報を「RiceXPro」で公開していく予定。

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