(独)産業技術総合研究所と兵庫県三木市にある破砕機・選別機製造の近畿工業(株)は5月23日、使用済みのハードディスクドライブ(HDD)からネオジム磁石を回収する実用性の高い技術を開発したと発表した。純度95%以上のネオジム磁石を効率的に回収でき、リサイクルへの貢献が期待できるという。 ネオジム磁石は、HDDやモバイル機器をはじめ、家電製品、ハイブリッド自動車、電気自動車などのモーターに幅広く使われ、ネオジムやジスプロシウムなどの希土類(レアアース)を多く含んでいるため、使用済み製品からの回収とリサイクルが求められている。しかし、ネオジム磁石は、自らの強力な磁力で破砕機や破砕物に強固に磁着して破砕機の運転トラブルの原因になり、破砕機から排出されたとしても他の鉄片などと強固に磁着して十分に濃縮できないなどの問題があって、現状では手作業による解体が現実的な回収方法となっている。 産総研と近畿工業は、今回HDD製品を対象に工業的な手法を開発した。HDDそのものは、主に鉄やアルミでできており、ネオジム磁石の占める重量割合は1.5%程度。その内の大部分は、HDDのヘッドの位置決めなどに利用されているボイスコイルモーターに使われている。 新技術は、2個の位置センサーと4個の磁気センサーで、ボイスコイルモーターの位置を検知し、この部位を非磁性鋼製のポンチ(打ち抜き刃)で切り抜くというもの。切り抜いた部位は、加熱して磁力を弱め、粉砕して鉄などを取り除き、純度95%以上のネオジム磁石を回収する仕組み。 HDDの製造年やメーカー、あるいは投入の向きや裏表にかかわらず、ネオジム磁石の格納部分を瞬時に検知でき、切り抜きに要する時間は1台当たり15~20秒程度で、1時間にHDD約200台の処理が可能。加熱を要するのは、切り抜いた部位だけなので、エネルギー消費が少なく、経済性に優れるという。 試作した装置は、「HDDカッティングセパレーター」といい、3.5インチHDD専用だが、将来的には2.5インチHDDや、他の磁石含有製品にも適用できる可能性があり、広くネオジム磁石のリサイクルに貢献することが期待できるとしている。2012年頃までに実用化の予定という。 詳しくはこちら |  |
HDDカッティングセパレーター試作機(提供:産業技術総合研究所) |
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