筑波大学は4月4日、リチウムイオン電池用に電池の残量が減るにつれ色が変わってゆく薄膜型電極を世界で初めて開発したと発表した。この電極、電気を使うにつれて色が薄らいで行き、残量ゼロで無色透明になる。数理物質科学研究科の守友浩教授と松田智行研究員の成果で、4月7日発行の応用物理学会の英文雑誌「Applied Physics Express」に掲載された。
リチウムイオン電池の材料で現在実用化されているコバルト酸化物系は、1g当たり140ミリアンペア時の電気を蓄えられるが、コバルトは高価なのでニッケルやマンガンをベースにした酸化物材料の開発が進んでいる。その一つに鉄やマンガンのような遷移金属が炭素と窒素で結ばれてポリマーを形成しているプルシャンブルー化合物がある。しかし、イオンの出し入れに対する耐久性が悪いため詳細な研究はこれまでされていなかった。
守友教授らは、このプルシャンブルー化合物に注目。酸化物系材料を用いたリチウムイオン電池の正極(陽極)は、ペースト型電極といって、リチウムイオンを出し入れする「活物質」、電子の移動を助ける「導電助剤」、この両者を結びつける「バインダー」で構成されているのに対し、プルシャンブルー化合物の「活物質」だけの薄膜型正極を作り、従来型のペースト型電極と性能を比べた。
その結果、120ミリアンペア時の電気が蓄えられ、100回の耐久テストでも電気残量は初期値の89%を示した。さらに、プルシャンブルー化合物は、電池の残りに応じて色が変わるのを発見、電池の残量を電極の色で知ることが可能になった。
研究グループは、今後、このプルシャンブルー化合物を用いた電池の蓄電量と耐久性を更に向上させ、電池残量と共に色が変る「カラー電池」タイプの薄膜型リチウムイオン電池の実現を目指す。
No.2011-14
2011年4月4日~2011年4月10日