高エネルギー加速器研究機構、東京工業大学、東北大学、静岡大学は3月8日、有害な鉛を含まない圧電材料として注目されているニオブ酸銀(AgNbO3)の結晶構造を世界で初めて解明することに成功したと発表した。
電気信号を機械的動作に変換したり、逆に機械的動作を電気信号に変換する圧電材料は、インクジェットプリンターや超音波診断装置をはじめ様々なエレクトロニクス製品に使われているが、この分野でも環境対策として有害な鉛を含まない材料が求められ、その非鉛系圧電材料として急浮上しているのがニオブ酸銀。しかし、ニオブ酸銀の結晶構造は、1958年の発見以来、未解明だった。
今回の解明では、東工大と静岡大の研究者が作成したニオブ酸銀の試料を電子や中性子、X線による回折という手法などを使い正確な結晶構造を決めた。
さらに、量子力学の原理に基づいて物質の構造や性質を計算する「第一原理計算」という手法によってニオブ酸銀の結晶構造が安定に存在することを確認、ニオブ酸銀の優れた圧電性が生じるメカニズムを突き止めた。
ニオブ酸銀の優れた電気的特性が原子スケールで明らかにされたことで、原子スケールでの材料設計が可能となり、鉛を含む材料をしのぐ性能の圧電素子実現に向けた新材料開発が進むものと期待される。
No.2011-10
2011年3月7日~2011年3月13日