LEDの光を従来の1.5倍の効率で取り出すことに成功
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月18日、ガリウム砒素系化合物半導体で発光ダイオード(LED)を作る際、半導体表面にnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールのリッジ(うねり)構造を作製、リッジ全体を酸化シリコン薄膜でコーティングすることで従来の1.5倍の高効率で光を外部に取り出すことに成功したと発表した。
 同研究所は、今後、リン化アルミニュウム・ガリウム・インジウム系や窒化ガリウム系でも同様の現象を発現させ、外部への光取り出し効率の高い可視光LEDの実現を目指す。
 化合物半導体LEDは、照明・表示などの省エネ光源として大規模普及に向けた研究開発が進んでいる。しかし、半導体材料の光の屈折率が一般に空気より大きいことから生じる空気界面での全反射で半導体内部に光が閉じ込められ易く、これが光を効率良く外部に取り出すのを困難にしていた。
 同研究所は、半導体材料表面に作った微小なリッジ構造が光の外部取り出し効率を高めることを前に見つけていたが、もう一段発展させて今回の成果を得た。
 具体的にはまず、ガリウム砒素基板上に有機金属気相成長法で「ガリウム砒素/アルミニウム・ガリウム・砒素」でできた断面が富士山のような形のnmスケールのリッジ構造を形成する。富士山の山頂にあたるリッジ構造の“山頂”の平らな部分(平たん面)の幅は、約0.5μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)。
 次いで、この1つの平たん面と2つの傾斜面で構成される断面が富士山状のリッジ構造の全表面に光の屈折率が半導体より小さい酸化シリコン膜をプラズマ化学気相成長法で厚さ約150nm堆積した。この試料の発光特性など評価した結果、酸化シリコン膜無しと比べて発光層の発光強度は約1.7倍、光の外部取り出し効率は1.5倍以上、それぞれ高まっていることが分った。
 これだけの数値は、ガリウム砒素など、光の屈折率が大きい半導体材料ではこれまで見られなかった。

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富士山のような断面形状のリッジ構造模式図(提供:産業技術総合研究所)