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測定データの新たな解析法を考案し有用性を実証―高速で自動的にデータ解析する計算法を確立:鳥取大学、高エネルギー加速器研究機構 

(2021年11月24日発表)

 鳥取大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、東京大学、九州大学の共同研究グループは11月24日、複雑で大量の測定データに対する新しい解析法を考案し、陽電子加速器による先端実験データで有用性の実証に成功したと発表した。高速かつ自動的にデータ解析する計算手法が確立したとしている。

 近年、複雑な関係を内包する大量のデータを高速かつ自動的に解析できる手法の開発が進んでいる。そうした中で研究グループは、全反射高速陽電子回折法(TRHEPD法)と呼ばれる技術で得られる測定データを、高速で自動的に解析する手法に取り組んだ。

 TRHEPD法は陽電子ビームを物質の表面すれすれに入射してその回折波強度を測定するもので、そのデータを解析することにより、数原子層の厚みの薄膜の原子配列を超高精度に求めることができる。しかし、測定データを解析する計算手法の整備が遅れていて、超高精度という利点を十分引き出せず、データ解析の高速・自動化が望まれていた。

 研究グループが新たに考え出したのは2段階解析法で、第1段階で自動最適化し、第2段階でデータ駆動型感度解析する。

 第1段階の最適化は、これまでパソコンを使った人的な試行錯誤で正味10時間程度かかっていたものが、自動最適化法の導入により1分以内で済ませられたという。

 第2段階の感度解析では、仮に1台で計算すると約4ヶ月かかるとされるものが、2,000倍高速処理されたという。

 TRHEPD法による高精度な測定データの高速な解析が確立されたことで、原子配列解析が促進され、革新的な化学反応触媒や超高速の情報処理ナノデバイスの開発への貢献が期待されるという。また、今回の成果は計算手法の発展に寄与することが期待されるとしている。