鳥インフルエンザウイルスの全ゲノムを解読―香川県の鶏で見つかった株はヨーロッパ株と近縁:農業・食品産業技術総合研究機構
(2020年11月25日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月25日、香川県の2つの養鶏場で11月の初旬に相次いで見つかった鶏のインフルエンザの原因ウイルスを解析し、全ゲノム(全遺伝情報)を解読したと発表した。両養鶏場のウイルスは共に国際獣疫事務局(OIE)が定める「高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)」で、昨年からヨーロッパで流行した株と近縁であることが分かった。
インフルエンザのウイルスはA型からD型まであって、それらの遺伝子は7~8本の遺伝子分節と呼ばれる断片からできている。
鳥のインフルエンザは広い範囲にわたって伝わる恐れがあり、中でも高病原性鳥インフルエンザは鶏に感染し易く数多くの養鶏が殺処分されるということが起こっている。2004年以降先ずアジアを中心にその高病原性鳥インフルエンザは発生が進み、2014年から世界的規模で発生が多発し、今年もヨーロッパ、ロシアで発生拡大が起こっている。
そこで研究グループは11月5日と8日に香川県の2つの養鶏場で見つかった死亡鶏から採取した「香川1株」、「香川2株」と名付けられているA型鳥インフルエンザウイルスを遺伝子レベルで調べ全ゲノムの配列を解読、既知のウイルスと比較した。
その結果、香川1株、香川2株は、それぞれが持っている8本の遺伝子分節の全てが2019~2020年の冬にヨーロッパの鶏や野鳥から分離されたヨーロッパ株「H5N8亜型HPAIV」と近縁であることが分かった。
日本では今年の10月に北海道大学が紋別市(北海道)で採取した野鳥の糞からヨーロッパ株と同じウイルスを見つけている。
今回の「香川1株」、「香川2株」のそれぞれ8本の遺伝子分節は、その北大が見つけたウイルスの遺伝子分節と相同性が高いことも分かった。
これらの結果から研究グループは2019~2020年冬季にヨーロッパで流行したウイルスが渡り鳥の繁殖期にシベリアに運ばれて拡散しそのヨーロッパ株が日本海を越えて四国の香川県にまで達したものと推察している。
農研機構は、重要な感染症病原体を取り扱うことが国際的に認められている同機構の動物衛生高度研究施設(茨城県 つくば市)で更に香川株の病原性などを精査していくことを予定している。