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都市部における人口変化の気温・電力消費への影響を算出―数値モデルを改良し、外出自粛による気温変化などを再現:産業技術総合研究所ほか

(2020年11月6日発表)

 (国)産業技術総合研究所と明星大学、(株)ドコモ・インサイトマーケティングの研究グループは、都市部における人口や人間活動の変化が気温・電力消費量に及ぼす影響を推定できる手法を開発し、新型コロナウイルス感染拡大で外出自粛した大阪市のオフィス街を対象に調べた結果、外出自粛で気温は0.13℃、電力消費量は40%低下したことが推定されたと発表した。

 都心部での人間活動を変化させることにより、省エネとヒートアイランド緩和を実現できる可能性が示唆されたとしている。

 研究グループは先に、都市の気候・気象をコンピュータ上で再現・予測する数値モデル「都市気候モデル」を開発し、夜間に郊外より高い気温を示す都市気候特有の現象の再現などを可能にした。今回はこの都市気候モデルを、気象学で用いられる領域(地域)気候モデルと統合するなどし、「都市気候モデル+人口データ」を開発、人口変化が気温・電力消費量へ及ぼす影響を推定できるようにした。

 外出自粛によってオフィス街では人口が減少するが、気温・電力使用量へのその影響を明らかにするため、2019年にG20サミットを開催し交通・出勤規制をした大阪市を対象に、G20開催時と外出自粛時における影響の評価を新手法で実施し、影響を比較した。

 外出自粛中のオフィス街の日中人口は普段の7割程度減(G20開催時の約7倍)であったが、この人口減少により、電力消費量は40%低下した。この低下はG20時の約10倍であった。

 電力消費量のこの低下に伴い、オフィス街の人工排熱が42%低下し、その結果として気温が0.13℃低下したと推定された。この気温低下量はG20時の約3倍であった。

 これらの推定結果は、都市部での人間活動を、例えばテレワークなどにより変化させ、「新たな働き方・日常」を推進することで、省エネとヒートアイランドの緩和が実現できる可能性を示唆しているとしている。

 今後はこの手法を他の都市に適用し、人間活動と都市の気候との関係を体系化するとともに、外出自粛が熱中症指数に及ぼす影響を調査するなどし、総合的な気候変動適応策の提案につなげたいとしている。